米国公認会計士という資格

私は米国公認会計士という資格を持っています。ビジネスの世界ではそれなりに有名な資格ですが、よくわからないという人が多いと思います。今日はそんな米国公認会計士という資格について書こうと思います。

まず、米国公認会計士という資格ですが、アメリカの資格で日本の国家資格ではありません。日本では日本の公認会計士資格がありますが、日本の公認会計士制度は1948年、つまり戦後からの歴史しかありません。一方でアメリカの公認会計士制度は1890年代から存在します(最古は英国で1854年からあるようです)。ほかの学問や法制度と同じように会計学、公認会計士制度も西洋からの輸入品なのですが、公認会計士制度については弁護士制度(1872年、前身含む)、税理士(1912年、同)、医師(1874年、同)よりもかなり遅れて入ってきています。公認会計士の前身にあたる計理士(1927年)という資格もあったのですが、ほかの資格より遅れて入ってきていますし、業務の内容や範囲、登録要件が大きく異なるので今の公認会計士制度との連続性はほとんどないと言ってよいと思っています。少なくとも会計学に関しては、戦前日本のものは自然発生的に誕生したものであり、戦後に入ってきた西洋の輸入品とは一線を画すものと言えます。

さて、何が言いたいのかといえば、会計に関して言えば、西洋が正真正銘の発生地であり、日本で使われているものは99%輸入品だということです。しかもその輸入の歴史は浅い。これは医学に関しても言えると思います。法律や税務に関して言えば、文字通り国によって違うので日本独自のものに形を変えています。これが会計は共通言語であるといわれる所以で、一度体系的な会計の教育を受けてしまえ、国ごとの差異を勉強するだけでどこでも適応できてしまいます。

私は大学時代は、法学部だったのでほとんど会計に関する教育は受けていませんでしたが、社会に出て体系的な教育の必要性を感じました。そこで簿記検定を取ろうと思ったのが最初のきっかけです。

しかし簿記検定、この勉強が面白くない。私が求めていた体系的な会計の教育とは、決算書から財務分析をしたり、ファイナンスやビジネスのシミュレーションをしたりすることをゴールとしたものでしたが、簿記検定は財務諸表のもととなる帳簿をつけるようになることが目的なのでそのはずです。計算ばかりで求めているものとは違うなと思いました。

そこで簿記はやめてしまいましたが、ひょんなことから米国公認会計士という資格を知りました。簿記を辞めた自分にできるかなと思っていたのですが、Abitusという予備校に行ってみたところ、全てマークシート式で計算はほぼないと聞かされました。テキストや問題集を見たところ、まさに私が求めていた「体系的な会計の教育」がありました。

しかし、ネックとなったのが費用。まず予備校代に50万円はかかる。受験要件である会計単位が足りなかったのでアメリカの大学で単位を取る費用と受験費用(ストレートで合格しても1科目5万円×4科目)で最低でも100万円、多く見積もって200万円は必要でした。当時、新卒1年目で手取りの給料が20万円を切っていた私にとっては大金でした。

そこまでの見返りがあるか分からないのにこんなに費用を掛けてやるべきなのか?そもそも簿記検定すらやめた自分に合格できるのか?と、私は迷いました。しかし、挑戦しなければ一生後悔するかもしれない、と思い挑戦することにしました。

そして2012年の8月に挑戦しすることにしました。それから2年半、2015年の終わりごろやっとの思いで全科目合格し、米国公認会計士資格を取得することが出来ました。思えば、途中、資格取得を軸としていろんな人との出会いがありました。何度もやめようと思いましたが、この資格を取って本当に良かったと思っています。もしなかったら独立することもなかったと思いますし、最初の会社に今でもいたかもしれません。

この資格に挑戦することを決断させたのは、「あらゆる挑戦に失敗はない」という言葉です。もし合格できなかったとしても、得るものはあるはずだ、だったら挑戦してダメだった時、挑戦せずに何も変わらない時、どちらが人生の失敗として沈痛だろうか。そして挑戦するのであれば精一杯やってみよう、そんな思いだったと記憶しています。

あの時のことを忘れず、後悔しない人生を送っていきたいと思います。