競合優位性の大切さ(その事業を私/あなたがする理由)

 仕事柄か、人柄(?)か起業相談を受けることが多くある。その時にシンプルかつ重要な視点は、「そこに競合優位性はありますか?」という問いだ。この競合優位性とは何か。

 「競合優位性」とはかみ砕いていえば、そのエリア・業種・業界で既に存在する同業他社を出し抜くことができる理由、根拠だ。これが明確でない場合は、その道のプロに勝つことができないため、良くてジリ貧、悪くて瞬殺されるため、いかに魅力的な市場であったり、他に参入すべき理由があっても、参入すべきでない、あるいは内部環境・外部環境の変化により、競合優位性が失われたのであれば撤退すべし、というのが私の考えだ。

 単純な考え方だが実際、これらを実践できていないケースは多い。経営者がやりたいから飲食店をはじめる、ゴルフ事業をはじめる。簡単に儲かると思ったからM&A事業に参入する。遊休資産を活用するためにホテル事業をはじめる。。。枚挙にいとまがないが、たいてい失敗している。

 では、どうやって競合優位性を見つければいいのか。そんな方法があれば私のほうが教えてほしいが、一つのヒントはブルーオーシャン戦略だ。「自分の勝てる領域までレベルを下げていく、領域をニッチに定義して参入する。下げきったらその領域をすべて平定する勢いで競合優位性を築いていく。平定したらレベルを上げるのではなく、さらに下のレベルに下がる。武器はプライドの低さだよ」こんなことを言っていた経営者は短期間で上場してしまった。

 小さな領域であっても、競合が少なく自分ひとりの事業を成り立たせるには十分な市場が存在するケースは多々あると思うので、私自身もこのことを忘れずに日々アンテナを張りながら、自分の競合優位性を把握しておきたい。

 

地方自治体における内部統制及び内部統制監査導入の必要性について

 

 地方自治法150条により都道府県と政令指定都市は内部統制の導入が義務付けられている。一方でそれ以外の自治体に関しては努力義務にとどまり、令和4年時点で導入を予定しているのはわずか16市5町村のみである(1,662自治体が導入予定がないと回答)。これはあまりに酷い状況だと言わざるを得ないが、自治体の規模にかかわらず、努力義務を果たそうする自治体が存在することは評価に値するとも言える。なお、私が住む豊橋市は導入していないが、隣接する豊川市は豊橋市より明確に規模が小さいにもかかわらず導入済みである。

 私の考えでは、その組織の目的にかかわらず、どんな組織にも内部統制が必要であり、それに伴う内部統制監査が必要である。特に地方自治体はステークホルダーが多い(市民全員)にもかかわらず、その運営が内向きに閉ざされる傾向があり、オペレーションや意思決定、制度設計に対して牽制機能が効きにくい。そのためこれまで多くの事務ミスや不正により、市民からの信頼が失墜されてきた過去がある。そういった事務ミスや不正を予防し、発見し、是正するために内部統制は非常に優れていることは上場企業に対する金商法監査(内部統制及び内部統制監査の強制)がもたらした上場企業のガバナンス機能向上で実証済みである。

 にもかかわらず、多くの自治体が地方自治法に定められた努力義務を果たさず、内部統制の導入を拒否しているのか。その理由は想像に難くなく、以下三点が考えられる。

 一つ目はリソースの制約、つまり、導入するための専門家がおらず、専門家をアサインする予算も割かれにくいこと。二つ目はその専門家ですらプラクティスが蓄積されていないため導入が手さぐりになっていること、三つ目は行政の人間も市民も内部統制に関して無知なケースが多く、法的拘束力がない以上、積極的に導入する動きが広がらないこと。

 私は三つ目に関して、特に問題意識を感じる。DXが叫ばれる中、いまだにFAXやフロッピーといった時代遅れなテクノロジーを使用し、非効率的なオペレーションがはびこるのは内部統制と内部統制監査からの有用なフィードバックが制度設計や意思決定に活かされてないからではないか。

 内部統制と内部統制監査がないために自治体の現場で何が起こっているかを考えたい。私の結論は行政サービス、市民サービスの遅延、満足度の低下だ。自治体の業務には多くの審査が必要となる。申請書類の審査、入札内容の審査等である。これらの審査がとても遅いのは説明するまでもないが、原因はマンパワーの不足以外に不必要な審査項目や無駄なプロセスが多いからと考えられる。

 申請内容を簡素化し、無駄なプロセス(印鑑ラリー等)要件を満たしているか事務的なチェックだけで審査を通すことができるはずなのだ。しかし、そうなりえないのはまず第一に行政の業務プロセスに第三者の目が入らず、効率化されたり、改善する機会がないからだ。もう一つは監査機能がほぼないため事案をスピーディーに通してしまいミスや不正が行われると取り返しがつかないとの考えから厳密性を担保するために保守的な制度設計にならざるを得ないと判断されるからだ。

 これらは監査手続きで行われる準拠性テストと実証性テストでほとんど全て解決できると考える。監査人からの適切なフィードバックと検証の担保により、市民にとって満足度の高い制度設計が可能となり得る。もちろん、監査の牽制機能により、行政の腐敗や不正の排除が期待できるのは言うまでもない。

 以上が私の地方自治体への内部統制及び内部統制監査の導入の必要性に関する初期的な見解であり、監査機能の拡充として内部統制監査を導入した場合に見込める効果を述べた。次回は現在の地方自治体の監査制度について、豊橋市を例に挙げて学習し、現行の監査を理解するとともに、私が知る(主に株式会社における)欧米流の監査機能と比較することでリスクマネジメントとガバナナンスがどれほど機能しているかを考察したい。

 (文献等)

総務省 – 地方公共団体における内部統制制度に係る調査結果

総務省 – 現行の地方公共団体の監査機能について

「地方公共団体における内部統制・監査に関する研究会」第1回議事概要

地方公共団体における内部統制制度の 導入・実施ガイドライン

米国公認会計士という資格

私は米国公認会計士という資格を持っています。ビジネスの世界ではそれなりに有名な資格ですが、よくわからないという人が多いと思います。今日はそんな米国公認会計士という資格について書こうと思います。

まず、米国公認会計士という資格ですが、アメリカの資格で日本の国家資格ではありません。日本では日本の公認会計士資格がありますが、日本の公認会計士制度は1948年、つまり戦後からの歴史しかありません。一方でアメリカの公認会計士制度は1890年代から存在します(最古は英国で1854年からあるようです)。ほかの学問や法制度と同じように会計学、公認会計士制度も西洋からの輸入品なのですが、公認会計士制度については弁護士制度(1872年、前身含む)、税理士(1912年、同)、医師(1874年、同)よりもかなり遅れて入ってきています。公認会計士の前身にあたる計理士(1927年)という資格もあったのですが、ほかの資格より遅れて入ってきていますし、業務の内容や範囲、登録要件が大きく異なるので今の公認会計士制度との連続性はほとんどないと言ってよいと思っています。少なくとも会計学に関しては、戦前日本のものは自然発生的に誕生したものであり、戦後に入ってきた西洋の輸入品とは一線を画すものと言えます。

さて、何が言いたいのかといえば、会計に関して言えば、西洋が正真正銘の発生地であり、日本で使われているものは99%輸入品だということです。しかもその輸入の歴史は浅い。これは医学に関しても言えると思います。法律や税務に関して言えば、文字通り国によって違うので日本独自のものに形を変えています。これが会計は共通言語であるといわれる所以で、一度体系的な会計の教育を受けてしまえ、国ごとの差異を勉強するだけでどこでも適応できてしまいます。

私は大学時代は、法学部だったのでほとんど会計に関する教育は受けていませんでしたが、社会に出て体系的な教育の必要性を感じました。そこで簿記検定を取ろうと思ったのが最初のきっかけです。

しかし簿記検定、この勉強が面白くない。私が求めていた体系的な会計の教育とは、決算書から財務分析をしたり、ファイナンスやビジネスのシミュレーションをしたりすることをゴールとしたものでしたが、簿記検定は財務諸表のもととなる帳簿をつけるようになることが目的なのでそのはずです。計算ばかりで求めているものとは違うなと思いました。

そこで簿記はやめてしまいましたが、ひょんなことから米国公認会計士という資格を知りました。簿記を辞めた自分にできるかなと思っていたのですが、Abitusという予備校に行ってみたところ、全てマークシート式で計算はほぼないと聞かされました。テキストや問題集を見たところ、まさに私が求めていた「体系的な会計の教育」がありました。

しかし、ネックとなったのが費用。まず予備校代に50万円はかかる。受験要件である会計単位が足りなかったのでアメリカの大学で単位を取る費用と受験費用(ストレートで合格しても1科目5万円×4科目)で最低でも100万円、多く見積もって200万円は必要でした。当時、新卒1年目で手取りの給料が20万円を切っていた私にとっては大金でした。

そこまでの見返りがあるか分からないのにこんなに費用を掛けてやるべきなのか?そもそも簿記検定すらやめた自分に合格できるのか?と、私は迷いました。しかし、挑戦しなければ一生後悔するかもしれない、と思い挑戦することにしました。

そして2012年の8月に挑戦しすることにしました。それから2年半、2015年の終わりごろやっとの思いで全科目合格し、米国公認会計士資格を取得することが出来ました。思えば、途中、資格取得を軸としていろんな人との出会いがありました。何度もやめようと思いましたが、この資格を取って本当に良かったと思っています。もしなかったら独立することもなかったと思いますし、最初の会社に今でもいたかもしれません。

この資格に挑戦することを決断させたのは、「あらゆる挑戦に失敗はない」という言葉です。もし合格できなかったとしても、得るものはあるはずだ、だったら挑戦してダメだった時、挑戦せずに何も変わらない時、どちらが人生の失敗として沈痛だろうか。そして挑戦するのであれば精一杯やってみよう、そんな思いだったと記憶しています。

あの時のことを忘れず、後悔しない人生を送っていきたいと思います。

零細企業の事業承継

M&Aを専門としているのですが、事業承継とM&Aの違いは?と聞かれることがある。私の答えとしては、「M&Aの類型の一つが事業承継です」となる。それ以上の明確な定義はなく、譲渡価額200億円の事業承継もありますし、譲渡価額100万円の事業承継もあります。

難しいのはM&A仲介、アドバイザリーの報酬、手数料は譲渡価額に係わらず、最低手数料が定められている場合が多く、場合によっては譲渡価額を超える手数料が発生することもある。大手企業の不採算部門のカーブアウト(切り離し)案件等であれば、譲渡価額0円、報酬5000万円でも全く問題ないのだが、売り手が従業員1~3人で売り上げ数千万円の企業、買い手もその一回り大きい同業のような場合、譲渡価額500万円、報酬5000万円では全くメイクセンスしない。

一方で、M&A仲介、アドバイザリー側としても、案件一つにかかる労力、時間は規模が変わってもあまり変わらないので、譲渡価額500万円で報酬50万円では全く採算が取れない。なので、あまりに小さい対象会社の案件は受任しない、あるいはプラットフォームに掲載して放置となる。

ある会社の経営者に「地元の小さい企業が廃業していくことは悲しいが、それがなくなったところで何か不便があるかと言われればないんですよね」と言われたことがある。要するに、ビジネスではなく地域創生の取り組みに近い。経済合理性を考えれば、廃業したほうが良い企業はたくさんあるし、買い手としても小さすぎる企業を買うより新規で作った方が安いケースがほとんどだろう。

零細企業の事業承継は、あまりお金儲けが介在しない非営利の取り組みとしてやるべきなのかもしれない。廃業する零細企業を無料で譲渡するくらいの取り組みがちょうどよいのかもしれない。しかし、問題はここでも専門家報酬で、これはどうしても掛かる。なぜなら専門家抜きだとやり方が誰にもわからないから。ただ、地元(東三河)に限り、私だったら無料でやれるということもある。

こういう廃業する人が無料で事業(設備)を譲渡みたいなジモティーの事業版みたいなことを豊橋でもできればなと時々思います。(どなたかいないですかね?)

初仕事

はじめまして、愛知県豊橋市を中心に活動している勝部一志と申します。住んでいるのは豊橋市なのですが、ビジネスは場所を選ばず日本全国でやっております。豊橋には2021年初頭から住んでおりましてもう3年になろうとしております。すっかり地元になりました。

仕事を聞かれると「会計士をしています」と答えることが多いのですが、私の場合、やや狭い分野を専門としていることもあり、世間でイメージしている感じとやや異なります。例えば、日本の税務申告や経理業務はほとんんど専門外ですし、税理士資格も持っていません(もちろん、普通の人よりは知っていると思いますが)。

では何をやっているのかというと、主にM&Aのアドバイザリー業務をやっています。この仕事を始めるまでに金融機関、監査法人といろんな職場を転々としてきましたが、はじめてのブログ投稿ということでM&Aアドバイザーとしての初仕事、初案件について書こうと思います。

私のM&Aアドバイザーとしての初めての案件は、中国地方の自動車部品会社で、売り上げは200億円規模で地元では知らない人がいない優良企業でした。すぐに終わるだろうと思っていたのですが、なんとすべて終わるまで3年も掛かり、終わったのは退職の寸前でした。

いろんな思い出があります。とても厳しいお客様でしたし、案件としてもたくさんの論点がありました。今思えば最初の案件があの案件でよかったと思います。

あれから7年近くが経ったのですが、つい先日、当時の会社が別の会社にM&Aされました。当時の買い手がファンドだったのでいつかは必ず売却すると思っていたのですが、まさか7年もかかるとは思わなかったです。

豊橋との出会いも最初はこんなに長い付き合いになるとは思いませんでした。けど今では、一生の付き合いになることを確信しています。これからも素敵な出会いがあることを楽しみに豊橋の生活を楽しみたいと思います。