零細企業の事業承継

M&Aを専門としているのですが、事業承継とM&Aの違いは?と聞かれることがある。私の答えとしては、「M&Aの類型の一つが事業承継です」となる。それ以上の明確な定義はなく、譲渡価額200億円の事業承継もありますし、譲渡価額100万円の事業承継もあります。

難しいのはM&A仲介、アドバイザリーの報酬、手数料は譲渡価額に係わらず、最低手数料が定められている場合が多く、場合によっては譲渡価額を超える手数料が発生することもある。大手企業の不採算部門のカーブアウト(切り離し)案件等であれば、譲渡価額0円、報酬5000万円でも全く問題ないのだが、売り手が従業員1~3人で売り上げ数千万円の企業、買い手もその一回り大きい同業のような場合、譲渡価額500万円、報酬5000万円では全くメイクセンスしない。

一方で、M&A仲介、アドバイザリー側としても、案件一つにかかる労力、時間は規模が変わってもあまり変わらないので、譲渡価額500万円で報酬50万円では全く採算が取れない。なので、あまりに小さい対象会社の案件は受任しない、あるいはプラットフォームに掲載して放置となる。

ある会社の経営者に「地元の小さい企業が廃業していくことは悲しいが、それがなくなったところで何か不便があるかと言われればないんですよね」と言われたことがある。要するに、ビジネスではなく地域創生の取り組みに近い。経済合理性を考えれば、廃業したほうが良い企業はたくさんあるし、買い手としても小さすぎる企業を買うより新規で作った方が安いケースがほとんどだろう。

零細企業の事業承継は、あまりお金儲けが介在しない非営利の取り組みとしてやるべきなのかもしれない。廃業する零細企業を無料で譲渡するくらいの取り組みがちょうどよいのかもしれない。しかし、問題はここでも専門家報酬で、これはどうしても掛かる。なぜなら専門家抜きだとやり方が誰にもわからないから。ただ、地元(東三河)に限り、私だったら無料でやれるということもある。

こういう廃業する人が無料で事業(設備)を譲渡みたいなジモティーの事業版みたいなことを豊橋でもできればなと時々思います。(どなたかいないですかね?)