トランプ関税の衝撃

4月に入って世界はトランプ関税に振り回されている。この話はトランプ就任直後からかなりの確率で導入されると読まれており、とっくに織り込んでいると思っていた私としてはマーケットがここまで振り回されたのは予想外である。

私は従前から、2期目のトランプはバイデンの積極財政をやめ、財政再建に走ると予想していた。ウォール街のご機嫌取りもしないだろうと思っていたが、まさかそれが的中してしまうとはにわかには信じがたい。

トランプ関税により、輸出企業の担当者は悪夢を見ているだろう。体力のある自動車会社は既存のアメリカ拠点に対する投資を拡大することが出来るし、韓国や中国、ヨーロッパの自動車は日本以上にダメージを受けると思われており、ここを乗り切れば日本の自動車会社はアメリカでのシェアを今以上に伸ばせるかもしれないので長期的に見ればそこまで悪い話ではないかもしれない。対して半導体や電子部品の企業は、トランプ関税が導入されてしまったら壊滅的なダメージを受けるかもしれない。特にこの分野は中小企業が多く、一部の大手を除いて自動車会社のような体力はない。そもそも、求められる技術力が高すぎてアメリカにすることが出来ないものも多い。そうなればヨーロッパや中国など別の輸出先に切り替えていくしかないが、それが出来るまで時間が掛かるだろう。一方、輸入企業や内需産業は円高傾向も相まってそれほどダメージを受けないかもしれない。

マーケットのテクニカル的には、日経平均は昨年8月の令和のブラックマンデーでつけた安値(31000円前半)を今回は明確に割り込んだので、一時的な戻りはあったとしても長期的な下げトレンドに突入したと見るのが適切かもしれない。目下、注目されるのはこれから控える1Qのガイダンスだろう。関税交渉の結果が見えない状態だと、企業側はかなり保守的なものを出さざるを得ないだろう。私の考えでは、このリスクをマーケットはまだ織り込むことが出来てない。だから直近の日経平均の安値である30500円を数カ月スパンでは割り込んでしまう可能性はあると思う。もちろん、短期的な動きは全く分からないのだが。

一方で、アップサイドの可能性はないかといえばそんなことはなく、トランプが関税を一切取りやめるとなるとマーケットはかなりポジティブで再び4万円を目指すこともあると思う。しかしやはりそんな可能性は低く、こちらも可能性は低いのだが日本が優遇されたとしても、中国やその他の国に対する関税を全て取りやめる可能性はほぼゼロだろう。そうなると、世界経済が受けるダメージは深刻だ。

数カ月前、私は英語圏の友人から「トランプが国内の所得税をやめて関税や外国への課税で賄おうとしているという話があるが本当か?」というメッセージを受け取った。その時、私は「そんなことはないだろう」と思ったのだが、今回の騒動で実際にそう考えている可能性があるなと思った。こういったバカげた考えに囚われてしまった権力者はなかなか自分の考えを変えない傾向がある。

トランプは恐らく貿易を否定して「自給自足できる経済」を目指していると思う。歴史を見て、この考えに囚われた権力者は非常に多い。中世の中国がそうであったように、アメリカは国土が広く、国外から何かを買う必要はない体制を作れるはずだ、と本気で思いこんでいる節があるのではないか。こんなことを肯定する経済学者は一人もいないだろうが、選挙で選ばれた国のトップの考えを変えることはほとんど不可能だろう。

そうであれば、これから貿易を否定しマーケットを破壊する政策をとる可能性は非常に高く、マーケットはこれらも不透明さに振り回されるだろう。これは中間選挙が行われる2年後まで続く可能性が高い。中間選挙では共和党は歴史的な大惨敗をして議会は大統領の権力を徹底的に封じてトランプが無力化する可能性が高い。ここまでくると不透明さはなくなり、関心は民主党の次期大統領候補選びに移っていくだろう。

日本の政局はどうだろうか。7月末の参議院選挙まで衆議院の解散はなく、衆参ダブル選挙もないだろう。現政権の続投も、参議院選挙の結果を見てから、という考えが支配的になるだろう。しかし、結果はもう見えており、自民党は惨敗する。2019年の貯金があるにしても自公で20議席以上失うことは確実で過半数は割れるだろう。

しかしそれでも政権交代が起こるかは分からないが、流石に石破政権が持たないのは明白ではある。ただ、次の総理が自民党から出るか、野党からでるかも割らない(可能性は高くはないと思うが・・・)。

こういった不透明さをもっているから、選挙に向けたマーケットの盛り上がりも限定的になるかもしれない。少なくとも選挙後は自民党惨敗を受けてかなり下がるのではないだろうか。

話がそれてしまったが、私がいいたのはトランプ関税に続く先行きの不透明さは長期化するということです。どうなるかは分かりませんが、そう考えて慎重に動いていきたいと思います。